ドラネス小辞典⑤ アルカディアの記憶 ~中編~
皆様こんにちはブラックバフです。
今回も引き続き、韓国公式サイトのコンテンツノートより
グラノームネストとアルカディアのバックストーリー(今回は中編!)をお届けします!
※今回の投稿は一部ネタバレを含みます!
特にサブクエスト/NPC会話未確認の方は要注意!!
原文はこちらからお楽しみいただけます!
韓国 ドラゴンネスト公式サイト
コンテンツノート
グラノームネスト〈手放すべきもの〉
チャイルドたちは互いに熟れた果実を奪い合い、戦い始めた。アルカディアの真ん中で。…この戦場においてアルカディア人たちは、単なる戦利品に過ぎなかった。
たかが戦利品が戦士と対等に渡り合えるなど、誰が考えただろうか?しかし、アルカディア人たちは最後まで抵抗した。城は失ったが、アカデミアを始めとする王国の家臣たちは、生き残った人々を率いて幾度となくアルカディア再建を試みた。しかし、挑戦はことごとく失敗に終わり、抵抗勢力は徐々に、外郭へと追いやられていった。
ついに彼らは、最後の手段として、国境近くの研究所を要塞に改造し、籠城した。この研究所は「チャイルドの宝玉の研究」を行っていたため、その危険性から外郭に建設されたのだった。しかし、その規模はかつての王宮に匹敵するといっても過言ではない。十分チャイルドの攻撃に耐えられるだろう…人々はそう信じた。研究所の所長であり、アカデミアの母である「テトラシア」の指示の下、アルカディアで最も強く精巧な機械警備兵「センチネル」が研究所の外壁を守った。ソーサレス・ソーサラーたちの魔法障壁により、内壁もガッチリと守られた。力なき平凡な人々も、皆集まって食料の調達方法を考案し、勇敢な兵士たちが壁の外に出て物資を調達した。
だが、研究所での抵抗も虚しく、すでに国土の殆どがチャイルドの戦場と化し、焦土化されてしまっていた。
「私たちは、はたしてこのまま…この場所に留まり続けていて良いのだろうか?なあ、アカデミア」
「何を仰るのです…らしくありませんよ」
「お前こそ…もう分かっているのだろう?この場所を守り続けても無意味だと」
母子二人きり、それ以外誰もいない中央研究室で、テトラシアが口火を切った。アカデミアはらしくないと突っぱねたが、彼女に言い返す言葉を何も見つけられずにいた。物資も十分ではなかったし、何より壁の外には、もはや希望などなかった。籠城していた人々も皆、それに感づいていた。
つい先日、壁の外から研究所に戻ってきた兵士はこう証言した。惨状はすでに国境近くまで迫っている。道端のあちこちに屍が転がり、パイプや歯車は壊され、歩くだけでも危険な状態…浄化施設は故障し、煤煙のために空まで黒く曇っているのだと。そしてその薄暗い空の下、誰かが巨大な体躯のチャイルドに生け捕りにされるのを見たと…
「この場所に留まって、その先に一体何があるというのだ?万が一、奇跡が起こって王都に戻れたとして、すでに息絶えた土地を生き返らせることが、果たして我々に可能だろうか?」
「……」
「壊れたものを直すよりも、それを捨ててしまう方が利口なことだってあるだろう。…アカデミア、決断の時だ」
「どうして、その決断を私に…?」
「お前がアルカディアの最年少ソーサラーであり、唯一研究所の全ての記録を記憶している、大天才だからだよ。いつも言っていたじゃないか。アルカディアの秘伝魔法と科学技術の全てを糾合し、次の世代を率いていくのは自分…アカデミアだと」
「…からかわないでください。あれは決して冗談のつもりではありません!」
今の状況ではまるで不可能な夢を、あの頃と変わらず自信満々に語る彼の態度に、テトラシアは吹き出して笑った。
「からかってなどいないさ。…アカデミア。生き残った家臣の中でも、お前が最も若く健康だ。そしてアルカディア再建に必要な知識を全て備えている。…だからお前が本当に、次の世代を率いていくのだ。人々を連れて、アルカディアを出るのだ。そして、お前と同じ意志を持つ者たちと共に、新しい土地を探せ」
「師匠…いえ、母上。あなたはどうするのです?」
「人々とお前が無事に逃げられるよう、時間を稼ぐさ。それに…お前が宮廷ソーサラーに就任して以来、私はずっとこの研究所を守ってきた。できればこの目で最期を見届けたい」
テトラシアはそう言うと、ゆっくりと研究室の壁を撫でた。彼女の目には何者にも動かせない強い光が宿っていた。それは「これ以上説得しても無駄だ」という無言の意思表示…アカデミアはただ、黙ってうなずくことしかできなかった。
「避難の準備は?できているのだろう?」
「はい。いつでも出られます」
「きっかり三時間後。魔法障壁を解き、チャイルドの気を引く。そこに合わせて外に出るのだ。できる限り沢山の人々を連れて…」
アカデミアは師匠の意思を人々に伝えた。人々の反応は様々だった。賛成する者、反対する者。これまで共に人々を率いてきた、かつての王国の家臣たちですら、意見が分かれた。しかし、しばらくして興奮が収まると、人々は理性的に話し合いを始めた。最終的に人々は、惜しみながらも外に出ることを選んだ。すでに彼らの王国を取り戻すことは不可能だったのだ。皆、同じ結末を心に抱えていたのかもしれない。
人々を隠れさせたアカデミアは、研究所の方をかえり見た。あと1時間もすれば魔法障壁が消え、それに気づいたチャイルドたちが研究所を襲うだろう。アカデミアはしばし迷った。
その時突然、何者かに攻撃を受けたかのように、魔法障壁が崩れ始めた。
人々が引き止めるのも聞かず、アカデミアは研究所に戻った。テトラシアを説得するために…いや、説得ではない。無理矢理にでも連れ出すつもりだった。しかし、中央研究室に到着した彼の目に、巨大な体躯のチャイルドが師匠の首を掴んで立っている姿が飛び込んできた。彼女の足元には、見るも無残に粉々になったセンチネルの残骸がばらまかれていた。
チャイルドは手にグッと力を込めたかと思うと、そのまま手を放し、彼女を床に放り出した。アカデミアは息を殺して、柱の影に身を隠した。人間ごときの生き死に、我関せず…といった様子で、チャイルドは彼女の遺体には目もくれず、地面に散らばるセンチネルのかけらを手に取ると、ゆっくりと眺めはじめた。
まるで…何かを観察するような仕草だった。
「虫けらどもの仕業にしては、なかなかに興味深い…」
アカデミアは柱の向こうから、その光景をはっきりと見ていた。驚くことに、そのチャイルドの眼差しは…輝いていたのだ。科学者のように。新しい技術への、知識への欲望に燃え、爛々と輝く瞳!
「噂どおりだな…さて…」
チャイルドはゆっくりと周囲を見渡し、壁に手を添えて何かを探し始めた。研究所を探索したのは初めてじゃないとでもいうような、余裕に満ちた動きだった。
この研究所には隠し通路があり、その向こうには、アルカディアの歴史が生み出した多くの武器や装置…そして、長きに渡りチャイルドの宝玉について研究してきた施設が存在した。
その存在を予め知っていたかのような彼の行動はもはや神秘的で、アカデミアは取り憑かれたようにその光景を眺めていた。その時、チャイルドは巨大な武器で壁の一部を殴りつけた。寸分の狂いもなく、隠し通路の入口を攻撃したのである。
チャイルドは破壊的だと心得ていただけに、科学者たちは皆信じていた。機械文明ばかりは、唯一人間だけのものだと。チャイルドならば、その価値を知るよりよりも先に、自らの傲慢さが仇となり全てを破壊してしまうだろう。チャイルドは皆、例外なくそうだったのだから。…少なくとも、これまでは。
…もしもあのチャイルドが通路の向こうの武器を、装置を壊さず利用したら?
アカデミアは直感した。あのチャイルドは、自分たちの知るチャイルドとは違う。そしておそらく、自分たちの知るチャイルド以上の脅威となるだろう。彼はこの場所を地獄にしてしまう。
アルカディアを豊かにしたあの技術で。…ゾクリ、と体が震えるのを感じた。
チャイルドは隠し通路の奥をジッと眺めていたが、突然、ギラギラ輝くその瞳が中央研究室に向けられた。瞬間、目があってしまったような感覚に陥る。まさか、気づかれた。今からでも逃げるべきか?それとも攻撃するべきか?アカデミアの頭を様々な考えが過る。しかしつかの間、彼は何も気づいていない様子で、暗がりに足を踏み入れた。
「……」
チャイルドの足音が消えてようやく、アカデミアは柱の影から身を現すことができた。体中に冷や汗が滲んでいた。
彼は母親のもとに駆け寄り、開かれたままだった瞼をそっと閉じた。そして背を向けて、自分のことを待っている人々の元へと向かった。
生き残ったアルカディア人たちは国境を超え、いくつかの集団に分かれて四方に散らばった。そのうち、アカデミアが率いる避難民たちは南へと向かった。その旅路で、ある若者たちと出会った。彼らはトリヤンの領地付近から来た、学徒たちだった。学を極め、いつかはアルカディアに留学することが夢みていたが、そのアルカディアが戦火に飲まれたと聞いて、いても立ってもいられず助けに来たというのだ。しかし旅が長引き、一歩及ばなかったのだと。
彼らは間に合わなかったことを悲しんだが、アカデミアは寧ろ良かったと思った。もし本当に彼らが戦いの最中に到着していたならば、間違いなくその志を遂げる前に死に至っていただろう。アカデミアが彼らに同行を求めると、一行のまとめ役であった「ナリン」を含む15人ほどがそれに合意した。彼の行いに一部のソーサレスや貴族出身の学者たちは顔をしかめたが、そんなことはどこ吹く風。若者たちは自然と人々に溶け込んでいった。
こうして、反女神派の新芽たちが、無事ディザン紅野に到着した。荒廃した土地だが、その地形と蜃気楼を利用すれば沢山の人々が容易に身を隠せるような場所だった。彼らはこの場所を拠点に、新たに大地を耕すことを決めた。
アルカディアの技術の結晶が、荒れ地を切り開いた。十数回に渡る失敗を乗り越え、貯水池を作り、初めて農作物を収穫した頃、人々は自らが切り開いた土地に「ラダメス-オアシスの国-」と名前をつけた。
ちょうど同じ頃、別の地域に散らばっていったアルカディアの人々に関する知らせも届き始めた。そのうち、ある集団は一人残らず命を奪われ、ある集団はどこかに定住し再び勢力を伸ばそうとしているそうだ。人々の縁は女神の網をかいくぐり、遠い昔にアルカディアを離れミストランドを旅しては名声を轟かせていた男「ダイダロス」の元まで届いた。彼は荒野を切り拓くことに役立ちそうなこと細やかな助言を長々と手紙に認め、ラダメスへと送った。
没落したアルカディアの知らせもまた届いた。かつて眩しいほどに輝いていたあの国は、今や死せる大地と呼ばれていた。アカデミアの予想どおり…彼らが旅立ってからも、幾度となくチャイルドの侵攻を受けたその国は、かつての面影もない廃墟と化してしまったらしい。時を同じくして、最後にその地を治めていた者についての噂も伝えられた。…それは知識欲にまみれた目を爛々と輝かせていたあのチャイルド。名を「グラノーム」というらしかった。
…いかがだったでしょう?
ネストボス「グラノーム」の名前が出てきましたね。彼のクレイジーな知識欲にはブラックバフも驚愕です。
ところで、オーブ破壊のときに人質にとられる(?)名前付きの幽霊…あれ、妙にリアルな人型で怖いと思いませんか…?私は少し怖いです…
今回の小辞典が、皆様のドラネスライフをさらに彩ることができれば幸いです!
それではまた次回お会いしましょう!